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盛岡地方裁判所 昭和43年(ヲ)21号 決定 1969年4月28日

債権者 大橋基人

右代理人弁護士 阿部一雄

債務者 浜田清典

第三債務者 下村マサ

主文

本件特別換価命令の申立てを却下する。

理由

不動産の所有権移転請求権に対する強制執行は、金銭債権に対する執行に準じて、右請求権を差押えたうえ、民事訴訟法第六一六条の規定の趣旨に従い、選任された保管人に取立権能(給付受領権限)を与えて取立てさせること(但しその内容は単に物の引渡のみならず、所有権移転の意思表示の取立てをも含む)によってなし、かつこれをもって終り、しかして第三債務者が右取立てに応じ、或いは応じないときは取立の訴を提起することによって、目的不動産の所有権が債務者に帰属した場合、不動産に対する執行方法により、債権者は、その本来の債務名義に基づいて、当該不動産自体に対する強制競売または強制管理の申立てをすることによって換価すべきものであり、したがってまた、有体物の引渡または給付請求権に対する執行については、同法第六一四条が特別換価方法を定めた同法第六一二条の準用を除外し、また同法第六一七条が転付命令を発することができないとしている趣旨に照らし、さらに若し目的たる不動産所有権移転請求権が存在しなかった場合には、当事者間に徒らに複雑な紛糾を招く虞れのあることをも考慮すると、とくに不動産の所有権移転請求権に対しては、特別の換価方法によって換価することはできないものと解するのが相当である。

よって本件申立はこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 田辺康次)

<以下省略>

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